はじめに
一番大事なのは「パパママの正しい知識と正しい理解」
こどもが熱を上げたり、かぜひいたりしたら心配で早く治ってほしいと思うのは当然のこと。
でもこどもはいろんな感染症にかかって、免疫をつけてだんだん丈夫になっていきます。
パパママもそうやって大人になってきました。
薬で治せる症状もありますが、外来にくる子のほとんどはウィルス感染の症状で治せません。
なんでも薬はこどもの体にメリットなく負担になっている場合も多々あります。
何がこどもにとっての正しい医療かを判断するには「パパママの正しい知識と理解」が大事で、外来でパパママにお伝えしたいと思っています。
疑問点は受診時に質問してください。
かぜ症状
かぜのほとんどはウィルス感染で治療薬なし
かぜとは熱、咳、鼻水が主な症状の上気道炎のことで、ほとんどがウィルス感染です。
迅速診断キットのある「インフルエンザウィルス/RSウィルス/ヒトメタニューモウィルス/アデノウィルス/コロナなど」や、予防接種のある「おたふく/水痘/風疹など」もウィルス感染です。どのウィルス感染も特効薬はありませんが、自然治癒します。
ウィルス感染じゃないとしたら?
ウィルス感染症じゃないとすれば細菌感染やマイコプラズマ感染が疑われ、抗生剤で治療します。
小児への抗生剤は耐性菌の問題があるため、処方する根拠がなければ当院では使用しません。
細菌感染やマイコプラズマは、診察時の所見、発熱の持続、症状、所見の悪化など、通常のウィルス感染の経過とは異なります。
診察時に今後の注意点をお伝えします。
解熱剤のメリット/デメリット、注意点
解熱剤は対症療法として一時的に少し熱を下げる薬です。
体重×10~15mgが目安で、座薬、粉、シロップがありますが効果は同じで、高熱だと下がらない場合もあります。
解熱剤はたくさん使ったから早く治るわけではなく、むしろ使いすぎは発熱期間を長引かせると言われています。
何度だから解熱剤でなく、熱でつらそうな時に使用しましょう。
咳止め、鼻水止めのメリット/デメリット、注意点
咳止めは中枢性鎮咳剤といい咳反射を少し抑える薬です。
ただ痰を出せなくなるので、特に小さい子にはデメリットが心配。乾燥したのどの咳なら咳止めは飲んでもいいですが、喘息症状や気管支炎、肺炎なら飲まない方がいい場合もあります。受診時に胸の所見をお伝えします。
鼻水どめは抗ヒスタミン剤といい粘液分泌を抑える薬です。
ただ鼻汁が粘稠になり喉が渇くなどの副作用があり、特に乳児には使用しにくい薬です。
薬にはメリットだけでなくデメリットもあります。
症状ある=かぜ薬でなく、その薬がこどもの症状に本当に必要か、パパママの理解が重要です。疑問あれば受診時に質問してください。
かぜ症状の普通の経過/要注意な経過
①熱
小児は37.5度以上が発熱です。発熱のお子さんを診察するときに小児科医が見ているのは、熱の高さでなくぐったりしているかどうか。
目力があって、座れて、ほかの症状(せき、はな、げりなど)がひどくないなら2~3日で解熱するはずで、急いで受診するよりお家に帰って早く休む方がいい場合もあります。
要注意な熱の経過は、ぐったりしている(目力がない)/丸3日以上熱が続く/熱以外の症状が悪化傾向/生後3ヶ月以下の発熱。なら受診が必要です。
②咳
普通のかぜ症状の原因の多くは、鼻水/喉のかぜ症状/喉の乾燥。夜に咳が多くても日中はそこまで多くないはず。鼻吸引/加湿/はちみつ(2歳以上)/のどあめ、で経過観察でいいでしょう。
要注意な咳の経過は、呼吸が苦しそう/喘息発作っぽい(息を吐く時ゼーゼーする)、など。日中もひどい咳が続く場合は肺が原因の可能性があり受診が必要です。
③鼻水
普通のはなかぜ症状なら透明な鼻水が出る程度のはず。すぐには治りませんが経過観察でもいいでしょう。3歳未満で鼻吸引希望の方は処置します。
要注意な鼻水の経過は、3歳未満で眼脂を伴うあおっぱな(中耳炎?)/くしゃみが続く時(アレルギー?)、などで治療が可能です。
救急受診が必要なかぜ症状って?
明らかに具合が悪い時は迷わず救急受診すると思います。一方で急に40度になったから救急受診した、などの話もよく聞きます。
熱あるお子さんにとって救急受診よりお家で安静がいい場合も多く、パパママの正しい判断が必要です。
中には自宅安静でなく救急受診が必要な場合もあり、時々聞くのが呼吸が苦しそう(ひどいゼーゼー、オットセイのような咳で吸気時にのどが凹む)だが朝まで様子みたとか。呼吸が苦しそうな時は夜間であっても救急受診が必要です。
はじめに
~一番大事なのは「パパママの正しい知識と正しい理解」~
こどもが熱を上げたり、かぜひいたりしたら心配で早く治ってほしいと思うのは当然のこと。
でもこどもはいろんな感染症にかかって、免疫をつけてだんだん丈夫になっていきます。
パパママもそうやって大人になってきました。
薬で治せる症状もありますが、外来にくる子のほとんどはウィルス感染の症状で治せません。
なんでも薬はこどもの体にメリットなく負担になっている場合も多々あります。
何がこどもにとっての正しい医療かを判断するには「パパママの正しい知識と理解」が大事で、外来でパパママにお伝えしたいと思っています。
疑問点は受診時に質問してください。
かぜ症状
かぜ症状
症状は発熱のほか上気道炎(鼻からのど)症状で、せき、はな、のどの痛み、があります。
ウイルスによっては上気道症状だけでなく、下気道症状(気管から肺)を合併することもあります。
発熱は3〜5日で治りますが、かぜ症状は長引くこともあります。
特に登園し始めは、何度も繰り返しかぜを引きます。
でも子どもはかぜを引くことでそのウイルスに対する免疫物質(抗体)を作り、同じかぜはひかなくなり丈夫になっていきます。パパママもそうやって丈夫な体を作ってきました。
いろんなお家から子どもたちが集まる園でかぜを予防することは無理です。
大事なことはかかった後のお子さまの状態を正しく把握し、かぜへの対応を正しく理解することです。
対処法
かぜの原因のほとんどはウイルス感染です。
そしてウイルス感染に治療法はありません。
せきどめ、はなみずどめの薬も解熱剤も、早期に使用しても治すことはできません。
それどころか副作用の点から、海外では子どもへの咳止め、鼻水止め、は処方されません。
かぜ対応の基本は、お家でゆっくり体を休めるホームケアとなります。
発熱
寒がる時は体を温め、暑がるようになったら掛け物を減らしましょう。
本人がきもちいいようにすることが大事です。
数日で熱は下がります。
ただし、あるけないほどぐったりしている、だんだん元気がなくなってきた、など悪化時は受診が必要です。
解熱剤
座薬、粉、シロップ、錠剤があります。
子どもに使用できる解熱剤は、アセトアミノフェン、イブプロフェンに限られます。
解熱剤は一時的に熱を下げる薬で、たくさん使っても早くは治りません。
状態によっては熱は下がらないこともあります。
熱で辛そう、ぐったりしている、寝れない、なら一時的に下げるため使用しましょう。
体温計の数値で解熱剤を使う必要はありません。
高熱だとしてもそこそこ元気なら経過観察でいいでしょう。
お風呂
熱があっても元気で、水分がとれているならお風呂は入っていいでしょう。
無理に入れる必要はありませんが、風呂に入ることですっきりし気持ちよく寝れる場合が多いです。
入浴する、しないはお子さまの全身状態で判断してください。
水分摂取、食事
水分はOS-1などイオン飲料、あるいは口当たりのいいリンゴジュースなどを飲ませましょう。
量も本人にまかせていいです。無理に飲ませる必要はなく、体調に合わせて本人が量を調整するでしょう。
食事も本人が食べたいものであればなんでもかまいません。アイスも今日はOKにしましょう。
咳、はな
のどの咳なら、部屋の加湿、ヨーグルト、ハチミツ(2歳以上)、のど飴(6歳以上)がいいでしょう。はな水には鼻吸引が一番効果的です。
苦しそうな咳、喘息症状は受診が必要です。
2歳以下のひどいあおっぱなも中耳炎の可能性あり受診したほうがいいでしょう。
咳止め、はな水止めの薬について
咳止め 子どもの咳止め薬は中枢性鎮咳剤といってせきの反射を脳で抑える薬です。
数時間少し咳を減らせますが、痰が出せなくなる副作用があり、海外では子どもには処方されません。
咳止めを軽い症状で飲ませるメリットはあまりありません。
悪化時は受診が必要です。
はな水止めは抗ヒスタミン剤といってはな水を抑える薬。
でもはな水がネバネバし詰まる副作用があり、海外では子どもに処方されません。
少しはな水がでたからといって、早めに受診し薬を飲ませるメリットはあまりありません。
悪化時は受診が必要です。
受診が必要なかぜ症状
どちらも症状がひどい、悪化傾向にある時は受診が必要です。
具体的には
- 熱
- 明らかに元気がない、熱が5日以上、熱と一緒に全身に発疹あり
- 咳
- 呼吸がくるしそう、のどが痛そう、ゼーゼーがひどい、喘息発作疑い
- 鼻水
- あおっぱながひどい、鼻詰まりで呼吸がくるしそう、くしゃみが頻繁
息が吸えなそう、呼吸がくるしそうな明らかな喘息発作は救急受診が必要です。
夜間救急受診の判断に迷う場合は#8000をご利用ください。
急性中耳炎
急性中耳炎とは
中耳炎は2歳までに8割はかかるはなかぜの一種です。
耳の中を外耳といいその奥に鼓膜があり、鼓膜の中を中耳といって鼻の奥に繋がっています。
ウイルス感染、細菌感染により中耳に膿、滲出液が溜まるのが中耳炎です。
受診のポイント
あおっぱなと目やにで、2歳以下で汚いあおっぱなは中耳炎の疑いがあり診察が必要です。
熱は必ずしも上がりません。
原因
ウイルス感染、細菌感染が原因です。
細菌はインフルエンザ菌、肺炎球菌、モラキセラ菌がほとんどで、抗生剤の効きにくい耐性菌が増えています。
対象法
おうちで吸引が可能なら吸ってあげましょう。
受診した場合は年齢、全身状態、鼓膜所見で治療方針を決めます。
かぜ薬の処方と、抗生剤は小さい子には耐性菌を増やすデメリットがあるので、必要な場合のみ処方します。
1回の治療で治る場合もありますが、数週間かかる場合もあります。
経過が長かったり、鼓膜切開などの処置が必要な場合は耳鼻科紹介します。
その他
耳かき;綿棒を奥までいれたり、耳かきでの処置は危険なのでおうちではやめましょう。
綿棒で入り口だけの耳かきなら可能なので、お家でする場合の注意点をお話ししますので受診時にご質問ください。
入浴について:耳の中は鼓膜があるので、耳に水がはいっても中耳炎にはなりません。赤ちゃん含め、耳周囲は普通に洗ってかまいません。
胃腸炎症症状
下痢・嘔吐
下痢・嘔吐とは
下痢、嘔吐は園で時々流行し、原因の多くはウイルス感染による胃腸炎です。
予防したいのは当然です。しかし便には10日以上ウイルスが排泄し続けること、症状のない不顕性感染の子も多いことから、これらを園で流行阻止することは現実的にはむずかしいと思います。
症状の見方
ウイルス感染なので治療薬はありません。
下痢に対してよく処方される整腸剤も、実はウイルス性胃腸炎には効果がありません。
1週間以上かかることもありますが、食事が取れて栄養状態がよくなれば自然に治ります。
嘔吐時の吐き気止め(座薬、シロップ、粉、錠剤)はお腹を動かす薬です。
ウイルス性胃腸炎の嘔吐は、治療しなくても半日か1日程度で治ります。
吐き気止めで時間稼ぎし、ひどい症状の場合は受診して下さい。
要注意な症状
- 腹痛を繰り返す
- 血便
- 繰り返す嘔吐あり顔色悪い
- 食事が取れない
なら受診が必要です。
ひどい腹痛が続く場合は救急受診です。
お家での対応
無理に水分を飲ませたり、食べさせる必要はありません。
飲めそうならイオン飲料(OS-1、ポカリ、アクエリアス)か、口当たりのいいリンゴジュースなど飲ませましょう。
食事も無理せず、本人におまかせでいいです。
経過観察し、全然食べたり飲んだりできず、具合が悪そうな時は受診しましょう。
腹痛
腹痛とは
腹痛は胃腸炎、便秘に伴う一過性のものから、虫垂炎、腸閉塞など緊急処置を伴うものまで様々です。
ほとんどは腸の動きに伴う痛みで、お腹を温めたり、時間が経過すれば治ります。
ずっと泣いている、常にお腹を屈めている、ジャンプするとお腹に響く、血便が多量、は受診が必要です。
受診の際に教えてほしいこと
- 痛みの程度は?
- 泣くほど?/痛みは間欠的?
- ずっと痛い?/便秘は?
- 治療歴は?
お家での対応
便秘の既往がある、元々便が硬く数日でていない、など便秘症状が疑われるなら、浣腸して経過観察でもいいでしょう。浣腸液は体重(kg)×1〜2 ml が目安です。
ひどい腹痛は受診が必要です。